吉村正先生
１２月にご講演を頂く先生の御本をご紹介します
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ニュースレター第５号ｗｏｒｄ
お産の歴史から始まる東洋医学（第2章）
かげやま医院院長 蔭山 充
先日、“助産婦”それも開業助産婦、もしくは開業を希望する助産師との混成集団から講演を依頼されました。この集団は助産「師」ではなく助産「婦！」を一貫して用いるようです。その理由をまだ聞いていません。平均年齢は35歳位で最高齢は50歳半ばでした。当初の予定参加人数が大きく上回り、この熱気はすごいものでした。「この理由は何だろう」と考えてみました。
今を逆上る半年位前、前回にも述べましたがある関西の看護大学の卒後の助産コースで「お産の歴史から始まる東洋医学」と銘打って3時間余りしゃべってきました。すなわち、各時代のお産の姿とその時に用いられた薬物や技術を歴史的にまとめてみました。ナースの資格を持つ学生達は割りに熱心に聞いてくれ嬉しいでした。
話を戻して開業集団には、このとき以上のすごい迫力に小生は何かを感じ、恐れをなしました。
この開業をめざす助産集団の眼はイキイキとして、一言も漏らさず聴いてくれて、次々と具体的な質問が続きました。
そして小生は、はたと気付きました。「お産の歴史は、漢方薬の発展の歴史そのもの」でもあるのだ。その証としてお産の前後には、漢方薬が本邦独自に工夫されてたくさん使われました。もちろん、非常有効なものもあれば荒唐無稽、まったく無効でおまじないの如きものも多くあります。しかし、産婆達はお産がうまく進行しないとき、漢方薬を処方してもらうために、産科専門医はほとんど存在しないため内科医師（本道）に頼りました。しかし、みじめな結果に終わった場合も多く若い妊産婦の死亡率は非常に高く、1/3は死亡していたようです。その証拠にその方面の書物によると殿位・足位・横位・胎盤遺残等の難産には多種多様の漢方薬、○○湯を使うとよいという記述があちこちに見受けられます。
ところで、時代は逆上るが、大宝律令（701）の医疾令での「女医制度」（助産婦）は朝廷の崩壊につれて、消滅していった。これに代わる民間での「産婆」が自然発生していくのは当然の帰結であるだろう。長い時間すなわち1000年以上をかけて、江戸時代中期18世紀半ばの賀川流産科の勃興後、本格的な職業の「産婆（旧産婆）」が誕生したようです。しかし、残念なことに、統一教科書や教育システムはなく、その資質は玉石混交でした。
ところで現在の助産師はこの流れとはまったく別物でして、『産婆取締規則』が明治元年（1868）に発布され内務（警察）行政から始まりました。この取締りの事実は幕末には分娩取扱が杜撰であったことを物語ります。そして、明治9年（1874）の『医制』の『産婆三箇条』が創始で、江戸時代には坐婆・隠婆などいろんな呼び方があるのに対して正式法律用語で「（新）産婆」と呼ばれ、急速に産婆養成施設が設立され教育体系は確立された。
この新産婆の普及と活躍で明治末年から大正年間に産婆の地位は江戸時代とは比べられるできないほど尊敬されるべき不動のものとなり、終戦（1945）昭和20年を迎える。そして、GHQとの闘争が始まることは、前回述べた。
研修会報告「助産業務を振り返る」
平成17年11月20日（日）、三井アーバンホテル大阪ベイタワー4階（桜の間）において、「助産業務を振り返る」をテーマに研修会が開催されました。
午前10時、石塚代表理事の開会挨拶の後、午前中に山口副代表理事による「助産師とヒューマンスピリット」、石塚代表理事による「助産師と救急処置」、午後からは、東京大学名誉教授 小林 登先生による「助産師に望む助産のあり方」、若尾助産院院長 若尾克美先生による「初回授乳のあり方」について講義・講演をいただき、盛りだくさんの内容の研修会となりました。
以下、研修会の概要を紹介します。
「助産師とヒューマンスピリット」
山口副代表理事
助産師にとってヒューマンスピリットの重要性、出産の自然回帰について講義が行われました。また、事例を示しながら、胎盤早期剥離事例の早期発見のポイント、分娩進行を促す温熱浴について紹介されました。
「助産師と救急処置」 石塚代表理事
助産師が救急処置を習熟することの重要性に加え、母体死亡の第２位である（分娩後）出血の処置について、具体的に実践を交えての説明がありました。
また、ＡＥＤ（自動体外式除細動器：Automated External Defibrillator）が紹介され、使用法についての説明（現在、ＡＥＤの機械は警察署・消防署・公的機関に設置されている）及び最新の医療情報の中で保健指導に役立つ項目についての紹介がありました。
「助産師に望む助産のあり方」
ぜひ、エモーショナル・サポートを大切に
子どもの虹情報研修センターセンター長、東京大学名誉教授、国立小児病院名誉院長、財団法人中山科学振興財団理事長 小林 登先生
助産師の情緒的な（emotional）サポートの重要性について講義されました。アメリカでは出産時にドゥーラと呼ばれる産婦の精神面をサポートする職業があり、クラウスとケネルにより分娩時間の短縮や母性行動の促進などドゥーラの効果に関する報告がなされていますが、わが国ではこの職にあたる役割を果たすのが助産師であり、助産師によるエモーショナル・サポートの必要性について再認識できました。
「初回授乳のあり方」
若尾助産院院長 若尾克美先生
最後に、桶谷式乳房マッサージの第一人者であり、当会の「乳房管理講習会」でもご協力いただいている若尾先生の講演で研修会は終了しました。
講演会終了後、参加者の皆さんから感想を伺いました。（アンケート結果より）
○ 今回で３回目の参加ですが、離床での参考になります。又、”助産師根性を知らされる”思いがします。
○ 小林登先生の「エモーショナル･サポート」についての様々な事、とても感銘しました。その大切さを胸に抱き今後の活動に生かして行きたいと思います。
○ 代表理事石塚先生の講義をはじめ、先輩助産師の方々、小林登先生の講演を聞き、今後臨床の場で、活かしていきたいと思いました。
○ 母と子供の絆の大切さ、すばらしい講演でした。ベテラン助産師さんのすばらしさも身にしみました。病院助産師であるため、思うように意見も出せず積極性もありません。又この会に出席して勉強していきたいと思います。有難うございました。
○ 小林登先生のお話は大変勉強になりました。母親を母親にしていくためには発達（人間形成）学もしっかり学ぶ必要があると思います。
○ 大先輩の先生方の助産婦としての理想を自分の師とさらに強く認識しました。それぞれの先生方の講義は、具体的で実践できるものも多くありました。小林先生の講義は、胎児･新生児の行動にあらたに意義づけのあることであり、とても深い学びになりました。環境のgoodな中での研修会、豪華な昼食に石塚先生の愛を頂きました。
○ 救急処置については、もう少し具体例をあげてききたかった。技術的なことももっと聞きたかった。
昼食もつけていただいてありがとうございます。大変美味しかったです。食事するときのテーブルは、もっと皆で会話が出来る形で昼食が取れればよかったかな。（円形になるとか）
石塚先生、山口先生、若尾先生のお話は、助産師魂を感じる素晴らしい御講義でした。
○ 小林先生の話は、内容、話の進め方等、まとまり、理解し易かった。少人数ではもったいない感じがした。
○ 小林先生の講演は多くの発見をさせていただきました。石塚先生、山口先生、若尾先生の技に勇気をいただきました。ありがとうございます。
○ 山口先生、石塚先生の講義から助産師のレベルUPのための技術の伝承など、心の広さが学べた。ありがたいと思います。成母期という言葉を初めて知りました。優しさ、優しい勇気づけが、人間の心身の発達の起源になることが理論的に学べた。
○ どの先生のお話も素晴らしいものでした。中でも石塚先生の生命に対する熱意というか、熱い思いが言葉の一つ一つから伝わってきて感動しました。
○ 大阪に出てきて４月に助産師として働き始めたばかりの新人です。病院勤務において、日々自問自答しながらの毎日です。転職先を考えているところです。今日は素晴らしい助産師の先輩方の温かい言葉がシャワーのように心に響き、信念を持ち助産師としてのプライド誇りを持って働きたいと気持ちを新たにしました。お忙しい中、準備・手配等ありがとうございました。
○ とても低価格でこんないいお講義がきけるのがありがたいです。（いいのですか・・・と思う程です。）若尾先生にオッパイトラブルの件で再度お教え頂きたいです。
○ 石塚先生、山口先生、本当に良い講義をありがとうございました。今後、今日習った事を地域でいかしていきたいです。
○ 気持ちを引き締めて、又、頑張っていこうと思いました。
○ 感謝の一言です。力づけられ、又学びを深めたい。
小林先生のお話は初めてでした。桶谷先生がいつも尊敬の念で話して居られたことを思い出していました。石塚先生の技術の伝えるお気持ち、配慮の不足を痛感しました。
ニュースレター第４号ｗｏｒｄ
「子どもたちは夢を持ってほしい」
小林 登氏 東京大学名誉教授、国立小児病院名誉院長、
サイバー子ども学研究所チャイルド・リサーチ・ネット所長、
子どもの虹情報研修センターセンター長
子どもについて、新しい立場で取り組みたい
私は小児科医ですけれど、親父は絵描き（日本画家）で、母親も絵を描いていました。私の弟は父の後を継ぎ、息子も絵は描きませんが芸術関係です。親戚にも芸術関係の人間が多かったのですね。ただ、戦争中に海軍の学校に行ったのがきっかけで、戦後医学部に入ることになりました。学生時代に内藤寿七郎先生（日本小児科医会名誉会長）にお会いし、その影響で小児科に進んだのです。
４０年ほど小児科医として働き、定年後何をしようかと考えた時、医療のことは、やる人はたくさんいるから、むしろ新しい立場で子どもの心を育てる研究をやりたいと思いました。その1つが、インターネットによるサイバー子ども学研究所です。1992年、ノルウェー・ベルゲンでの子どもの問題に関する国際会議で、子どもの問題を広く考えるために、ノルウェーの国立子ども学研究センターを中心になって、医学者だけでなく、心理学者、社会学者など、世界の研究者をインターネットでつなごうということになり、育児・保育・教育のサイバー子ども学研究所Child Research Net（CRN）をつくったわけです。
もう1つは「子どもの虹情報研修センター（日本虐待・思春期問題情報研修センター）」です。こちらは、急増する子どもの虐待に対応するため、児童相談所や養護施設などの職員を研修して、そのレベルを上げるために、厚生省が横浜市を介して福祉法人に依託した国立民営の施設です。同時に、この施設は、虐待に関する情報も集め、整理して、より良い対応をする役割も担っています。これも子どもの心に関係あります。
この２つが現在の私の主な仕事です。
科学する子どもの心を育てるために、
生きる喜び、遊ぶ喜び、学ぶ喜びいっぱいの生活を！
子どもが将来、科学するようになるかどうかというのは、その子の持っている資質に関係すると思います。子どもの能力の半分は、お母さんとお父さんの遺伝子が決めています。残りの半分のうち、20％はお母さんのおなかの中にいる時の影響なので、あまりお母さんがタバコを吸っていたりするとまずいわけです。残りの20％は、生まれてからの育児や保育や教育。そして、後の10％は、わからない・・・・・・。
子どもを科学に関心を持たせるには、自然に関心を持つこと、数学や物理を理解する高度な知性を持つことなどが大切なのでは、と思います。
つまりそれは、まずは普通の子育てでいい――子どもの時は子どもらしい生活をして、走り回って、生きる喜び、遊ぶ喜び、学ぶ喜びいっぱいの生活をさせることです。伸び伸びと育てて、自然に触れる体験をして、自然に関心を持たせ、そして勉強が好きなようにすればいい。その子どもが中学校・高等学校ぐらいになった時に、自然科学に興味が向くようにするのです。
私自身は、親父が絵描きだったから、自然が豊かな所に住みました。育った所は杉並で、当時善福寺川の水がきれいに流れる所でした。透明な水の中では、タナゴがいっぱい泳いでいましたし、棘魚という巣を作る魚もいました。その川縁には、葦切りという草も生え、行々子という鳥が飛んでいました。我が家から小学校へ行くために林の中を通って行く時見た、樹液が流れていると樹の幹にカブトムシが群がっている姿を今も思い出しますね。現在は、残念なことにまったく変わってしまいましたね。
夢を持って、楽しく学び、楽しく遊ぼう
これからの時代――未来は、必ず良い時代になると、私は思います。実際はなかなか難しいかもしれないけれど、私はそのように子どもたちには、強く言いたい。
また、いい時代になるように、子どもたちには夢を持ってもらいたい。その夢はどんな夢でもいい。ノーベル賞をもらえるような偉大な科学者になろうという夢でもいいし、アメリカの大リーグで活躍する野球の選手になるという夢でもいい。自分に合った大きな夢を持って、それをめざして、楽しく勉強し、楽しく遊び、毎日が生きがいのある日にしてもらいたいと思います。
そして、勉強が好きな子に育てるには、誉めることです。学校の試験が60点のテストを持って帰って来た時でも、お母さんは「何よ、60点？」などと言ってはダメなんです。「あ〜、よくできたね。じゃ、この次は70点を取ろうね」というような会話で、子どもをやさしく勇気づける。そうすると、「60点が取れた！」「70点が取れた！」という喜びを体験できるじゃないですか。誉めて育てることが、僕は重要だと思いますね。
みんなで仲よく生きる、
21世紀は「心」の時代になるように・・・・・・
未来において科学・技術が人の役に立つものであり続けるために大切なことは、やっぱり「心」だと思います。我々が使っている電力の3割か4割は、今、原子力発電に頼っています。原子力も人類に貢献しているわけですが、それを戦争では、人を殺すために使う。そういうことも人間の心が決めているのです。
20世紀は科学技術の時代で、豊かな社会をつくりましたが、その影響でいろいろな問題が出てきました。例えば、お金がありさえすればいいとか、物を持ってさえいればいいという考え方の問題ばかりでなく、環境汚染・温暖化そして生活廃棄物から産業廃棄物の山の問題、また戦争やテロリズムなど、人間の様々な行動にも直接または間接に影響を与え、いろいろな問題が現れてきました。
21世紀は「心」の時代、やはり人間の時代にしなければなりません。そのためには人間の心を大切にすることを学ばなければいけないと思うのです。
みんなで仲よく生きる――共に生きる（共生）、みんなで考えて物を作る（共創）、自然との共生だけでなく異文化の人とも共に生きていく――そういうことを考える「心」を持たなければいけない。
私がいろいろと子どもたちのために研究や実践活動を行っているのも、やはり心を育てたいと願っているからです。育児や、保育や、教育というのは、子どもの心を育てることが、やはり一番大きな目的なのではないかと思いますからね。（談）
財団法人ソニー教育財団HP（2002/11/15インタビュー）より
「楽しいお産」で少子化STOP！
近 田 和 久
私は以前、労働組合の仕事に携わっていたことがあります。
職場での労働環境の改善から、賃金要求、社会制度改革に至るまで、労働条件にかかわる様々な問題に取り組んでいました。
特に、国民全体に及ぶ重い課題である、年金問題、税金問題、医療費の問題等についても役員の間でいろいろと知恵を出し合い議論しました。
その中での共通の認識として、これらの諸問題の根底にあるのは少子高齢化であることが確認されています。支給を受ける高齢者がどんどん増えて、その財源を支える若者が減っていくという現象。「この狭い国土に見合った人口に収束している」という見方もありました。何世代もかけて徐々に収束しているのであれば何の問題もないのですが、今のこの現象は急すぎます。何とかしないと、近い将来、医療福祉制度自体が崩壊するとも言われています。
では、なぜ女性が子どもを産まなくなったのでしょう。このご時世に子どもを安心して世に送り出せないという社会不安や、子どもを育て上げるのにやたら金がかかるといった経済的な問題もあるでしょう。しかし、最大の理由は、女性の社会進出だと言えます。世の女性達はその持てる能力を発揮し、自己実現あるいは社会貢献というやりがいを見つけました。個人にとっても社会にとっても大変有益なことです。
しかし、女性が社会で能力を発揮しようという時に大きなハードルを越さなければなりませんでした。それは、結婚して家庭に入るか、仕事に生きるかを迫られるような状況。これまでの「男が金を稼いで女が家庭を守る」といった性差別的な社会の仕組み（ジェンダー）がこのハードルを作り上げてきた訳ですが、このハードルは今や存在自体がナンセンスです。
女性が働きながら子どもを産みやすくしなければなりません。そのために様々な施策が考え出されました。男女の別なく取得可能な育児休業制度、子どもの突発的な発熱などに対応できる家族看護休暇制度、例えば夫が子どもを保育園へ送り妻が迎えに行けるような時差出勤制度、休憩時間を子どもと過ごせるような勤務先における保育施設の充実、子どもの多い家庭への優遇税制や児童手当の拡充などなど。それら全てについて、少しずつではありますが、法律等により制度化されたり、社会的に取り入れる風潮が広がりつつあります。
しかし、最大の難関は、やはり「女性がいかにお産を楽しく経験することができるか」、つまり最終的には女性のメンタル面での課題をどうクリアしていくかにかかっているのではないかと私は考えます。
「陣痛が始まって病院へ行ったら、ベッドにつながれ、白い天井を見ながら一人陣痛に耐え、点滴を打たれて事務的にお産させられた」と不満を感じているお母さんが少なからずいるのではないでしょうか。
以前、同じ職場にいた女性職員もその一人でした。二人目を身ごもって憂鬱そうに嘆いていましたが、二人目は助産院で出産したらしく、「お産が楽しかった」と感想を漏らしていました。彼女は今や３児の母です。
お母さん方に「お産を楽しく感じさせる」ことこそ、少子化にブレーキをかける最大のキーポイントではないでしょうか。そしてこの「臨床助産の会」こそ、楽しいお産を社会に広げる技術伝道者集団ではないでしょうか。そんな団体を応援していきたいと思っている会員がいることを心の片隅に留めていただけたら幸いです。
ニュースレター第３号ｗｏｒｄ
「お産の歴史」から始まる東洋医学（序章）
かげやま医院院長 蔭山 充
先日、Ａ看護大学の助産学生に「お産の歴史から始まる『東洋医学』」のテーマで３時間を越えて講義しました。これをまとめるために、大層な時間と労力を要し、そのうち論文にしようと決意しました。その折、かなり昔に購入してその存在すら忘れてしまった、まっさらの産科叢書の復刻本が非常に役立ちました(１）)。
さて、日本人のお産の歴史はいつ頃からでしょうかという楽しい議論は原書を御参照下さい(２）)。いつ頃から現在の助産システム、産科学が確かなものになったかを少し書いてみます。
縄文弥生時代、古墳時代も巫女（みこ）が中心で「お産はめでたい」もので、神様からの贈り物でした。そして、奈良時代には遣隋使、遣唐使を介して701年「大宝律令・医疾令」が発布され、中央では宮内省に典薬寮が設けられ、医博士・医師・医生と針博士・針師・針生（すべて男性）が制定され、その後、「女医」と「女医博士」が追加されました。この女医が助産婦（！）に相当し、女性が行いました。女医博士は男性で産科医に相当します。
しかしその当時、どの程度の知識・技術であったかは不明ですが、江戸時代の中期、賀川玄悦（1700〜1777）が主導する‘賀川流産科’が登場し全国を制覇するまで、あまり進歩していないようです。その頃から漢方薬では催生薬として『五積散』（63）が、つわりの薬では『小半夏加茯苓湯』（21）等が用いられ現在も生きている(３）４）)。この時代の産婆には公式の教育制度や私塾等はまったくありませんでした。
さて、本格的な産婆（助産婦）制度が確立するのは明治７（1874）年「医制」の制定以降であり、この産婆に関する三箇条の規定後の「新産婆」と、江戸時代の「旧産婆」とは実力に大きな差がありました。この明治以来の世界に冠たる助産婦制度を破壊しようとしたのが、ＧＨＱ占領軍指令部で昭和20年以降の話です。つまり、アメリカの医療制度（産科看護婦）を定着させようとしました。しかし、やはり本物の実力を持つ産婆が力強く現在まで生き残ったことは、その真価の証であると思われる。時が流れて勤務助産婦が多くなり、この明治以来の開業産婆の気概がなくなり、助産婦から助産師と名を変え、その心意気がなくなってきたらしいことを危惧されている。つまり、この独立開業を支援することこそが“産婆魂”を育むと言えるのでしょう。
何かにつけ国民皆保険を崩しアメリカの医療制度の跡追いをしようとしている政府の商売人一派は、海のもくずとまもなく消えて行きます。
＜文献＞
１）富士川遊・呉 秀三・増田知正：日本産科樷書 恩文閣 昭和46年復刻
２）杉立義一：「お産の歴史」集英社新書 2004
３）蔭山 充：「五積散」の頚菅熟化作用 京都大学助産婦同窓会誌 2001
４）蔭山 充：助産漢方医学（その２）−中医解剖学と妊娠悪阻・嘔吐− ペリネイタルケア 1999vol.18 ��5 ｐ83−87
しかしその当時、どの程度の知識・技術であったかは不明ですが、江戸時代の中期、賀川玄悦（1700〜1777）が主導する‘賀川流産科’が登場し全国を制覇するまで、あまり進歩していないようです。その頃から漢方薬では催生薬として『五積散』（63）が、つわりの薬では『小半夏加茯苓湯』（21）等が用いられ現在も生きている(３）４）)。この時代の産婆には公式の教育制度や私塾等はまったくありませんでした。
さて、本格的な産婆（助産婦）制度が確立するのは明治７（1874）年「医制」の制定以降であり、この産婆に関する三箇条の規定後の「新産婆」と、江戸時代の「旧産婆」とは実力に大きな差がありました。この明治以来の世界に冠たる助産婦制度を破壊しようとしたのが、ＧＨＱ占領軍指令部で昭和20年以降の話です。つまり、アメリカの医療制度（産科看護婦）を定着させようとしました。しかし、やはり本物の実力を持つ産婆が力強く現在まで生き残ったことは、その真価の証であると思われる。時が流れて勤務助産婦が多くなり、この明治以来の開業産婆の気概がなくなり、助産婦から助産師と名を変え、その心意気がなくなってきたらしいことを危惧されている。つまり、この独立開業を支援することこそが“産婆魂”を育むと言えるのでしょう。
何かにつけ国民皆保険を崩しアメリカの医療制度の跡追いをしようとしている政府の商売人一派は、海のもくずとまもなく消えて行きます。
＜文献＞
１）富士川遊・呉 秀三・増田知正：日本産科樷書 恩文閣 昭和46年復刻
２）杉立義一：「お産の歴史」集英社新書 2004
３）蔭山 充：「五積散」の頚菅熟化作用 京都大学助産婦同窓会誌 2001
４）蔭山 充：助産漢方医学（その２）−中医解剖学と妊娠悪阻・嘔吐− ペリネイタルケア 1999vol.18 ��5 ｐ83−87
大野明子先生講演「自然出産について」
NPO法人臨床助産の会 第２回定期総会後、「分娩台よ、さようなら」「子どもを選ばないことを選ぶ」の著者である大野明子先生の講演が開催されました。
大野先生は出産後子どもを母乳で育てる体験から産科医を志し、医学部に編入し、臨床医としての経験を重ね、平成9年6月より出張分娩（自宅出産）専門の「九段お産相談室」（平成10年8月、「明日香医院」と改称）を開設されました。その後、平成11年に東京都杉並区高井戸で「お産の家 明日香医院」開院されています。
妊娠した女性には赤ちゃんを産む力があり、また赤ちゃんには生まれる力がある。そんなお産ができれば、その子を母乳で育てることも自然にできるというのが先生の持論です。それは、本来はあたりまえの、人のいのちの営みです。このところ、マスコミや雑誌などの世間の動きを見ていると、自然分娩への回帰、あるいは自然分娩指向が流行のようです。病院でも自然分娩を掲げているところが、少なくありません。自然分娩という言葉は、ちまたにあふれています。
「自然」という言葉を使うとそれだけで何かいいものの様に納得してしまいがちですが、それでは、世間でいうところの自然分娩は、どんなお産をさしているのでしょう。という導入から先生のお話が始まりました。講演の内容をまとめると、現代の、あるいは世間でいうところの「自然分娩」という言葉で表現されている状況は、自然に始まった陣痛で、お腹を切ることなく、下から、つまり、経膣的に産まれることのようです。途中で薬で促進しようが、会陰切開しようが、自然分娩といわれていることが多いのです。薬で陣痛を起こした分娩は誘発分娩と言われることが多いのですが、赤ちゃんが出るとき吸引をしても、自然分娩と呼ぶこともあるようです。ともかく、よくわかりません。
自然分娩という言葉は、本当は、もっと人間本来の、命の営みを意味していたはず、産む力と産まれ来る力、両方の自然と命の尊厳を表す言葉だったはずです。本当は、お産のやり方を示す言葉ではなくて、そのあり方を示す言葉だったのだと先生は述べられていました。
また、そもそも、「お産」という言葉と「分娩」という言葉は、どう違うのでしょう。それから、「出産」という言葉もあります。いずれも子どもを産むことを指す言葉でしょうけれど、それぞれのニュアンスは少しずつ違います。
「お産」という言葉は柔らかくて、優しくて、人間的な響きがします。子どもを産むとことは、もともと、医療でも医学でもありません。もっと、もっと根元的な、ひとのいのちの営みです。
大切なのは、やり方ではなくて、ありようです。そのありようは、お産という言葉にぴったりだと思います。本講演では、人間本来のあるべき姿のお産、ふつうのお産、「あたりまえのお産」についてあらためて考えさせられました。あたりまえの姿は、人によって違うのがあたりまえです。「その人と赤ん坊が、そのいのちのままに、お産できること」と言ったらいいでしょうか。あたりまえのことがあたりまえでなくなってしまった現代における、現代ならではのあたりまえのお産のお話に私は感動し、参加者も大いに感銘を受けていた様子が伝わってきました。大野明子先生、ありがとうございます！！
自然な営みの流れの中で子を授かり、
お産をし、そして育てるということは、
本来、そんなに難しいことではないはずです。
むしろ、それは楽しくとても素晴らしいことです。
そんな「いのちを育む」ということに
思いを巡らせるひとときを設けられたら、
と今回の企画を思い立ちました
（山口県立大学看護学部 赤井由紀子）
記念講演会終了後、参加者の皆さんから感想を伺いました。（アンケート結果より）
○ 自然分娩の大切さを改めて実感しました。（病院勤務しています）
○ 自然分娩のすばらしさを感じますが、病院にいるとなかなか困難です。
○ 大野明子先生の考え方、現状が広く理解できました。自然出産のすばらしさを実感しました。また、リスクも判断対応も必要なこともわかりました。
○ 産科医と助産師のみの開業ではやはり根本的に違うものがあると思う。血液検査のデータ等はどうしているのでしょうか。特に血小板の少ない方の分娩はどうしているのでしょうか。
○ 大変よかった。妊婦の出産のときの笑顔が美しかった。自然出産は本当にすばらしい。
○ ほとんどが自然に産まれると聞いて、自信を持ったと同時に、その事が検証できる様に、技術、精神力もみがかなくてはならないと思った。
○ 正常に進行していれば待つことが大切である。助産師とお母さんとのコミュニケーションが大切です。
○ 大野Dr.は医学部在学中からの知り合いです。大野Dr.は産婆以上に産婆らしいものを大切にしておられる。近代医療の中にあって、近代医療（行き過ぎた医療の介入）を否定しながら女性（産む女性）を守っておられる先生を尊敬します。
○ 安産法は全くそのとおりであると思いました。
○ 日常自主的に行って苦労している問題を気持ちのもちようで改善させたり改善したりということが言えることがわかる。助産師は比較的独善的になりがちであるが、その弊害を考えながら、やはり精神力を大切によいお産に向うべきとつくづく思う。
○ 大野先生のお話、助産婦のみでなく、ぜひ産科Dr.にも聞いてほしいです。日々できるだけ母の
気持ちを受け入れていけるよう心がけていますが、今日の話を聞いてまだまだ未熟だと感じました。また自然出産については、私たちも母の産む力、赤ちゃんの産まれようとする力を信じないとうまくいかないように思います。今それができているか自問したいと思います。
○ 大野先生のお話についてたいへん感銘を受けました。こんな産科の先生もいるんだなぁ。私も施設の中であきらめずにお母様方、赤ちゃんのために頑張っていこうという勇気をいただけました。ありがとうございました。
○ 大野先生、思ったとおりのお話を聞けてとてもよかったです。母と子のとてもいい顔の写真を見せていただいてとても安らぎました。
○ 自然出産のすばらしさに感銘したアルバム作りができていた。
○ あらためて、自然なお産ってすばらしいと感じた。自分が助産師になってよかったと思った。施設内でも自然なお産を心がけていきたい。
○ 大野先生のお話は迫力があった。
○ 大野先生の講演を聞いて、助産師がやれることをもっと胸を張って言えるようにならなければと思いました。
○ 助産学生の時に「分娩台よさようなら」を読んで大変感激しました。今日は、その大野先生のお話を直接きくことができて、とても嬉しかったです。自分の病院勤務の中での分娩介助を今一度振り返り初心にかえった思いでした。
○ あらためてお産を考える時間を得てよかった。女性達にどのように情報発信していくべきか、課題・安全性とは何か共に語り合える場をもちたい。
ニュースレター第２号ｗｏｒｄ
妊娠中の体重管理のあり方について考える
大阪市立大学医学部看護学科 今中基晴
母体体重は、妊娠に伴う母体の代謝性変化や胎児の発育によって、生理的に増加します。妊娠中の体重増加はおよそ8〜12kgであり、その内訳は、胎児・胎盤・羊水などが約4.5kg、子宮・乳房が約1.0kg、循環血液量が約1.5kg、他に脂肪組織、間質組織水分などがあります。特に水分の増加は著明で、妊娠末期には6.5Lの水分が増加します。
過度に体重が増加すると、�’タ厩盞谿犠標�群（2005年4月、従来の妊娠中毒症の名称・定義・分類が変更されました。）、��対糖能異常、��heavy-for-dates（HFD）児、�と�弱陣痛、遷延分娩、弛緩出血、�ツ覯�切開、鉗子・吸引分娩、�β杙�ジストレスなどの発症リスクが高くなり、一方、体重増加が不良であると、早産、妊娠高血圧症候群、ならびにlight-for-dates（LFD）児の発症リスクが高くなります。
エネルギー源として、胎児は脂質よりも糖への依存度が高く、母体はグルコース消費を抑え脂質代謝への依存を高めています。母体の糖代謝は胎児へのグルコース供給を促進するために、糖尿病に似た状態となり、妊娠中、摂食後の高血糖と高インスリン血症がみられます。このインスリン抵抗性（高インスリン血症にもかかわらず、対糖能異常を呈し、インスリン作用に組織が抵抗性を示す）はヒト胎盤性ラクトーゲン（hPL）、成長ホルモン、グルカゴン、カテコラミン、糖質コルチコイドによるもので、妊娠の進行とともに増加します。グルコースは胎盤における促進拡散によって輸送され、母体の血糖が上昇すると速やかに胎児の血糖が上昇し、インスリンの分泌が促進され、エネルギー源としてのグルコースの獲得と同時に、インスリンの成長促進作用（他の因子も関与していますが）によって胎児は発育します。したがって、胎児のインスリン分泌が過剰になると、胎児発育が過剰になります。
近年、妊娠高血圧症候群を始めとする母体合併症の発症予防の観点から、体重増加は厳密にコントロールされる傾向にありました。妊娠40週の平均出生体重が1980年の3,223gから2000年の3,185gへと減少しているのはカロリーの摂取制限が大きな要因と考えられます。
最近、妊娠中の栄養不足によって、将来、児の成人病の発症リスクが高くなる、「バーカー（Baker）説」が提唱されています。妊娠中、低栄養にさらされた児では少しの栄養でも発育できるように代謝適応が確立し、成人になっても肥満や成人病を引き起こしやすくなるものと考えられています。
どの程度の体重増加が適切であるかは、妊娠・分娩、児への影響を考慮し、判断されるべきですが、未だ明確な基準がありません。基本的に、妊娠前から太り気味（BMI26.4以上）の妊婦は体重増加を小さくすべきであり、やせ気味（BMI19.8未満）の妊婦は体重増加を大きくすべきです。後者では妊娠中期までの約5kgの体重増加が得られなければ、栄養状態を再検討する必要があります。
妊娠中の体重管理は個々のケースに応じて、柔軟に対応することが肝要です。
NPO法人臨床助産の会 第2回定期総会開催
平成17年4月16日、大阪市天王寺区のホテルアウィーナ大阪において、第2回定期総会が開催され、伊藤千榮子総会議長の下、�（神�16年度活動報告・決算報告、�∧神�17年度活動計画案・予算案、�Ｌ魄�人事について審議が行われました。
報告・提案の要旨と、討議の概要をご紹介します。
（敬称は略させていただきます。）
１．平成16年度活動報告
� 〕�事会の開催
計3回（H16.4.4、H16.7.4、H17.2.11）実施した。
�◆―�産師の質的向上事業
○ 講演会（H16.4.4）参加約30名
�� 助産技術の伝承による次世代育成事業
○ 研修会（H16.7.4）参加37名
テーマ：性教育の実際から学ぶ
講師：今中基晴、石塚和子、正木かよ、
山口みちる、赤井由紀子、勢力陽子
○ 乳房管理講習会 若尾助産院 参加計5名
（H16/8/24-25、10/29-30、11/16-17）
○ 講習会「観察ポイントと助産診断術」
H16/10/16-17（参加143名）
H16/12/18-19（参加181名）
講師：石塚和子
○ 地域研修会（名古屋H16.11.20）参加20名
テーマ：自然出産のための助産技術
講師：石塚和子、若尾克美、山口みちる
�ぁ，修梁召了�業
○ 会員ハンドブック発行（H16.5.25）
○ 機関紙の発行（第1号：H17.3.30）
2．平成17年度活動計画（案）
� ―�産師の質的向上事業
○ 講演会「自然出産について」
講師：大野明子（産婦人科医）
�◆―�産技術の伝承による次世代育成事業
○ 研修会テーマ
・ 産婆、助産婦、助産師の歴史的な歩みをふりかえり、そのメリット、デメリットを考えてみる。
（会員意見）合計特殊出生率の低下が問題視されている中で、子どもが健やかに育つ環境を考え、また、少子化対策への対応として、助産師の役割や活動を5年スパンで振り返ってみてはどうか。
（理事）全国で活動する助産師へ指針を与えられるような活動をしていきたい。また、活動の取組みについて、できれば毎回、計画からまとめまでを出していきたい。
・ 地域活動として、「エイズ感染の防止」を目標にワーキンググループを作り、活動内容の充実を図る。
・ 高齢者の敬老会の開催から、いきいきサロン等を通し、老人への理解と福祉を考える。
・ 匠の技として、物理学、助産学の統合から助産診断とそのケアを学ぶ。
・ 仕事と子育ての両立をどのように工夫し、またどのように支援していくか。
・ 「個体の死はあっても、その生命体としての生は生き残る」その意味を考える。
・ 損害保険の仕組みを考える。
○ 乳房管理講習会（若尾助産院）
○ 講習会「観察ポイントと助産診断術」
講師：石塚和子
平成17年4月 福岡で開催予定
○ 地域研修会
兵庫、名古屋、山口、福井、東京、奈良での実施に向け検討を行う。
�� その他の事業
○ 本の販売
○ 広報・啓発活動
・ 機関紙（ニュースレター）の発行
・ 各種研修会・講習会の教材・ﾋﾞﾃﾞｵ等の貸出し
・ 非会員向けNPO活動の紹介ﾊﾟﾝﾌﾚｯﾄの作成
3．平成16年度決算報告
及び平成17年度予算（案）
平成16年度決算では繰越金が大幅に減少した。
財政面での厳しさは会員数が少ないことが大きな理由の一つと考えられることから、平成17年度においては、新規加入の働きかけを積極的に行うとともに、予算面では、管理費を大幅に圧縮することで支出を抑える予算となった。
4．役員人事について
退任される正木理事に代わり、理事会から赤井由紀子氏が新たに理事に推薦され、承認された。
正木前理事及び赤井新理事の挨拶をもって全議事は終了し、伊藤議長の閉会宣言により第2回定期総会は閉会した。
総会終了後、隣室の昼食会場へ移動し、西大和シルバーズの演奏をBGMに、和やかな雰囲気の中、昼食を食べながら会員相互の意見交換を行った。
午後からは、産婦人科医の大野明子先生をお招きし、本年度の最初の事業として定期総会記念講演会を開催した。大野先生には「自然出産について」の演題で、ご自分の経験談をまじえながら、約2時間にわたり、講演をいただいた。
講演会に引き続き、自然出産を実践している前田弘子氏によるプレゼンテーションがあった。その後２つのグループに分かれ、「助産師が行う自然出産」をテーマに問題点等を検証し、それぞれのグループから発表があった。
最後に、石塚代表理事から、「助産師は技術者であり、先人たちの匠の技術を後継者に伝えていかなければならない。」との本会の理念を再確認する挨拶があり、第２回定期総会の全日程を締めくくった。
（講演会等の詳細については、次号掲載予定）
日本古代よりの産婆魂を伝えたい
池 田 悦 子
私が産婆になりたいと思ったのは、女として生きていくために絶対必要だと思ったからです。
昭和11年4月、岡山医科大学附属病院産婆看護婦養成科に受験入学し、昭和13年3月に卒業、産婆看護婦試験に合格し、昭和13年4月から昭和16年3月までの間、岡山医科大学附属病院産婦人科に勤務しました。
昭和16年4月より岡山医科大学担当の日本海軍の軍人軍属の家族だけが使用できる舞鶴海仁会病院産婦人科に軍属として終戦まで勤務しました。終戦と同時に海軍の病院から舞鶴市民病院と変わったが、12月31日まで市民病院産婦人科に産婆として働き、退職後は境港に帰郷して開業しました。旧産婆規則により県知事宛に開業届けを提出し、昭和21年2月1日許可証が届いて以来、今日まで助産業務一筋にまた母子保健にも邁進してまいりました。
私が今日まで助産婦として生きてこられたことに厚く感謝しております。そのことについて将来助産業務を受け継いで下さる皆様に私のたどった道を少しでもお伝えしたく思い簡単に報告致します。
開業以来59年間一生懸命やってきたこと、まずは、基礎をしっかりと身につけ、地域の母子のためまた住民の信用と信頼を得て、出産・育児を楽しく貫くように応援することです。信用されると、口コミでだんだんと仕事が増してきます。
私が今まで心がけてきたことは、
�� 誠心誠意で診察、分娩介助、産褥手当てを行い、授乳、育児など何でも相談に優しく心から対応すること
�� 診察時にはゆっくりと心を込めて暖かく接し、異常確認、早期発見に万全を期すること
�� 嘱託医と平素より親しくお互いに信頼し合えるように接しておくこと
�� いつ・いかなる時も私事よりも受け持っている妊産婦のことを第一に考えること
お蔭様をもちまして、無事故で今日まで来たことに感謝しています。
最後に、私が人としてこうならないよう常に心がけていることを紹介します。
○ 腹を立て、物を苦にすること
○ 己の慢心にて人を見下すこと
○ 人の悪を見て己に悪心を増すこと
○ 無病の時、家業怠りのこと
○ 誠の道に入りながら心に誠なきこと
若い助産師の皆様、どうぞがんばってください。
。ニュースレター創刊号ワード（ＷＯＲＤ）をお持ちの方は上のアドレスをクリックしてください
ニュースレター創刊にあたって 代表理事 石塚和子 いつの頃から、人のよい開業助産師は自らが持てる力量までも軽視され、いわゆる学歴のないものは重視されなくなったのだろうか。現代社会は逆に“技”を尊重し、学歴を第一義にしてはいない。生命を預かる者は、日々に知識を深めなくてはならず、同職種間は特に学んだ知識の交流を図らなくてはならない。その上で、新たなものを創造していくことが必要となる。助産師は、技術を持てる集団であると自覚している。臨床経験がないということは、技術面での習熟度に欠ける。開業権を持つ助産師にとって、このことは見過ごすことのできない憂慮すべき点である。
故に、助産師は開業助産所における訓練を受けておくべきであろう。技術を持たないものが開業権を持ち、生命にたずさわっていると聞いたなら、社会は何というだろう。今ここに誕生した生命の息吹を見るにつけ、生命の何たるやを感じ、そのことに引き続き“愛”“絆”“実直”“真実”“やさしさ”を学び、決してたじろがないものとして、また、自分の生き方として「助産師の魂」を身についていかなければならないと思う。母子の生命を任される臨床現場での自己形成過程は、責任の比重が少ない場所における自己成長とは比べものにならない程の、「雲泥」の差があること申し述べたい。このことは、分娩のメカニズムを学ぶことや、母子のケアについても何をかいわんやである。助産師の集まりは、人格を伴った集団として尊敬され、匠の技をもって、人命を助け得る専門職であることを自覚されたい。今一度、原点に立ち返り、助産師本来の姿とはいかなるものであったかを皆様と共に考え、学び続けて行きたい
平成16年度第3回理事会開催
平成17年2月11日、奈良県三郷町のホテルにおいて、平成16年度第3回理事会が開会され、
○ 17年1月末までの活動報告・会計報告
○ 第2回定期総会
○ 平成17年度活動計画・予算
などについて討議が行われました。
討議の要旨をご紹介します。
１．17年1月末までの活動報告
� ．瓮妊�カ出版協賛の講習会について
○ NPO会員の参加者数はわずかだったかもしれないが、メディカ出版の協賛を得、それを糸口としてNPOの活動が広がったことが重要で、評価したい。今後、この活動をどのように拡張させた事業計画を立てていくかが課題である。
�◆ー稟�先生による乳房管理講習会について
○ 匠の技の伝授はNPOの目的でもある。このことを広報活動等で広く知らしめていく必要がある。
○ 日程が合わない等の理由で参加人数が少ない。年初に日を決めて広報し、希望者を募ってはどうか。
○ 認定証のようなものがあれば、開業助産師にとってはメリットとなるのではないか。
○ 日帰り研修や土日の研修の希望者が多いが、受入は可能か。
→ 日曜は午後若尾助産院が休診であるため症例が少ないとのことである。今後のやり方については、若尾先生と相談したい。（石塚）
�� 性教育を行う助産師のための研修会について
○ 学校教育の現場では、性教育＝命の学習と位置づけられており、小学校低学年では、性教育を学ぶ基礎作りとして、「自分は人の助けを受けて生まれ育ってきた」ということを具体的に教えることで、命の大切さを学習させている。中高生にいきなり性教育をしても子どもたちの心に届かない状況があり、もっと早い段階で性教育に取り組む必要性を感じている。また、その必要性を教師自身にも伝えていく必要があると考える。いろいろな情報が子どもたちを取り巻いている中で、科学的知識を教えることだけでは子どもたちを救うことはできない。人権問題を含めた学校での性教育と、助産師の扱う性教育とはその性質が異なってはいるが、子どもたちを取り巻く環境を考える時、今、子どもたちの心を救える性教育が求められている。それがまさしく助産師による命の教育ではないか。
○ いろんな悲惨な事件を耳にするが、起きてしまった現象に対するのではなく、現象を起こさないことが助産師の仕事である。助産師は原点に戻るべきである。
○ 学校の現場では、文部科学省が出す学習指導要綱に基づいて教育が行われているが、この中に性教育についての記述はなく、基本的な計画は都道府県の裁量に任せられている。このため、理科や体育等の授業の中にとり入れられたり、総合学習の中で、環境・命をテーマに行われている。各地域、学校によって性教育のニーズが異なるので、事前に学校側とよく話し合うことが大切である。
○ 助産師による命の教育としての性教育を実施した際に、学校側からのフィードバックとして、教師や親からのアンケート結果をいただくことがあり、親から性教育についての研修会を求められたりするなど、次の機会への参考となっている。学校で性教育を行っている助産師は少なくないはずであるが、助産師個人としての活動であるため、アンケートなどで得られた貴重な意見を、今後のNPO活動に生かしていくことが必要である。
○ これまでの話をベースとして、その中で助産師が積極的に性教育に参画していくために、NPOは何をしていけばよいのか、助産師への教育の必要性も含め今後検討していかなければならない。「命の輝きを哲学する」心を持ち続けながら、この課題に取り組んでいきたい。
�ぁ｜楼荼�修会のあり方について
○ 地域にも目を向けて、地域で開業する助産師を対象とした研修を実施することもNPOの当初からの目的である。NPOでなければできない企画が必要である。
２．17年度活動計画
○ 地域にいる優れた技術を持った人の技術を伝えるのもNPOの目的の一つである。地域研修を充実すべきと考える。
○ 少子化の影響で、学生の実習経験例数が少なくなってきている。卒後教育の充実が必要である。
○ 教育環境を充実させるためには、大きな力が具体的な圧力となって国へ働きかけることが必要である。
○ 広報活動の充実
研修VＴＲの編集、閲覧に加え、News Letterを発行し、NPO広報活動の充実を図る。
ナンシー・ケントウェル先生
会員の皆様 お元気でいらっしゃいますか？臨床助産の会の会報が発行され、臨床助産の会の益々のご発展をお祈り致します。ニューヨークにいる会員の一人として私が出来ることは、日本の外から観て違いを感じたことや、こちらの助産業界の情報、本などを部分的に翻訳したりしてアメリカの助産師達の考え方などお伝えするなど、日本、韓国、米国の臨床助産業界を経験し、そして親になる為の教育をしている立場で、少しでもお役に立てればこの上ない光栄と存じます。
またニューヨーク近辺の産科病院や、バーシング・センタなどの見学ツアーなどをご希望される方は喜んで実費でご案内いたします。ツアーは６人から８人ぐらいのグループがこちらの産院に申込むのにちょうどよい人数だと思います。
さて初めに Gentle Birth Choices（やさいし出産の選択）の本の中の一部分をご紹介致します。
アメリカの助産業界の伝統“Midwife”（ミドワイフ）という用語は文字どおり“妊産婦と一緒”という意味で、従来は、医師以外の誰もが風習的に自分の出産の経験から他の妊産婦の出産を助け、その技術を次の世代に伝え、又多くの妊産婦を助けた経験の有る人にミドワイフの権限を与えていました。しかし、文化の発達に伴いこの伝統的な習わしも、産科医学の発展によって中断され、家庭分娩から産院に移されました。ところが 女性も教育を受けるようになった今日、女性の身体のしくみや、出産の能力の神秘さなどの専門知識や熟練した技術の専門教育を受けた人によって、女性やその家族に親密な男女関係の尊重、伝統的な治療より予防、プライバシー、健全な家族、責任感、忍耐、そして女性としての自覚、分娩に臨んでミドワイフが使う色々な道具などを理解させ、妊産婦自身が出産をするものであって、産科医やミドワイフはただ立ち会って何かあったら助けるといった昔のミドワイフが復活してきました。そのような関係で今アメリカは、1920年代又は1930年代から、American Medical Association (AMC)（アメリカ・メディカル・アソシエイション）によって事実上中断されていた従来のミドワイフの、伝統的な歴史が高度のレベルで明るみに浮かび上がったわけです。
出所：Gentle Birth Choices
著者：Barbara Harper,R.N
翻訳：ナンシー・ケントウェル
とは言いましても上記のようなアメリカの助産師にも今もって、保証保険がいまだにカバーされないので、いろいろな問題はあります。私の知る限りでは、アメリカの、特にニューヨークの人口は多くの違った人種と階級で成りたっていて、低収入又は無収入者は、無料で政府から援助してもらうことができる関係で産科医に頼る人が多く、産科医らの機械的な分娩介助の方がより多くの消費者を占めています。しかしミドワイフを高く評価してミドワイフにかかるのは、やはり教育水準の高い女性です。それは産前教育をしっかり受け止めて生産過程は自然なものであることを知っているからです。
尊い生命を預かる責任が重い助産師は、それにこたえて、高度の教育も当然のことながら、数多くの臨床経歴が非常に重要なことだと思います。
場所は大阪なにわ会館だそうです
講師の先生は、吉村正先生
他の情報はわかり次第アップします
今日はＮＰＯ法人臨床助産の会の会議でした、私は役員ではありませんが、近くでしたので行かせてもらいました、責めの積極的な案を検討しました、、皆さんの文章力に脱帽です
良い物が出来るといいなと思います
タコ飯美味しかったです、一升も炊いて残りはどうなったのか少し心配、貰って帰ればよかったです。