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2009年07月21日

13号

Japanese Clinical Midwifery Association (JCMA)



  
NPO法人臨床助産の会 
平成21年 第六回総会を終わって
臨床助産の会代表理事
山口みちる

 今年の梅雨は、温度、湿度がたかく、不快指数が日に日に上昇しています。会員の皆様お元気で、お過ごしでしょうか、お伺い致します。
 地球という小さな島国日本には、悠久の時が造った大自然の四季があります。
 美しい国日本、その国に住む私達は四季の移り変わりにあわせて生活のリズムを作って来ました。そして心の豊かさを育ててきました。しかし一昨年リーマン・ブラザーズの破綻に端を発した、今世紀未曾有の大不況の波に翻弄されてか、日常生活のみならず、人々の心の中まで明るさを無くしてしまい、毎日報道されるニュースも強盗、殺傷、殺人など、心が凍るような出来事が多く、四季の移り変わりに心の癒されるという事を考えるゆとりがなくなった様に思います。この様な社会、これでいいのでしょうか。
 世直しを主張する人達も居ます。人間が造った世の中、必ず原因があるはず。
 私達は、性と生殖に関わる職能、人の人生に深く関わる職能だからこそ。暖かい心の通うサポートが出来るのです。今の世の中の救世主は私達の職能だと思います。
 人の性格は生まれてから3歳くらい迄に形成されると言われています。機械で言うなればハードな部門です。そのハードな部門としての人間の性格が造られると言われます。その後はソフトな部門がどんどんと発達していくのだそうです。
 この大事な時期に(生後3年の間)豊な母性の育みを受けて育った子供は、如何なる環境の変化によっても、心を汚す子どもにはならないと、ある学者の先生が言われています。
 母となる母性を育て、生まれた子供の性格形成までお手伝いできる私達の職能は本当に意義のある職能だと誇りに思います。
 広い地球の中で文明文化の発達によって、又民族、風俗によって分娩、育児も異なりますが、自然の法則、によって分娩は女性に備わった力(生理学の分野)を十分発揮させるために、世界の助産師職能の人達は、世界のそれぞれの国々で頑張っています。
 助産師という自覚、と使命感によって責任を果たし得る様自立する事が大事です。一つ一つの事例に真剣に立ち向かってこそ考察としての技が生まれるのです。先輩助産師達の血の出るような経験から得た技を是非受け止めて、助産師の糧にしましょう。経験豊富な助産師達と話し合いを持って助産技術の改革につなげて頂きたいと思いますので、どうぞ皆様のご意見をお寄せ下さい。
 歴史は繰り返すという格言があるように、お産のすべてが医療の管理下に置かれようとしている現日本の周産期医療も、助産師のお産の良さが見直され
日が必ず来ると思います。       
代表理事  山口みちる         

       
  


研修会報告《心と技の手渡し》


平成21年6月7日
平成21年度 第1回研修会
「会陰保護術」に参加して

        東海市民病院 近藤 望
このたび私は、6月7日に名古屋短期大学で行われた、正木かよ先生による「会陰保護術」の研修に参加させていただきました。研修会では先生の手技を撮影されたDVD画像を先生の解説を受けながら見ることができました。
先生の介助されるお産は、産婦さんの息遣いと先生の穏やかな声が聞こえ、児頭は産道をゆっくりゆっくり、赤ちゃんが必要とするだけの時間をかけて、本当にゆっくり降りてきました。先生の手は会陰から離れることなく置かれていて、その視線は常に会陰の安全を診断しつつ、児頭の出てくる道を守っていました特に児頭の最小周囲経に持って行くための屈位への誘導は、動画で無ければ伝わらない細かい指の動きを見ることができました。
一番勉強になったのは、肩甲娩出時における会陰保護でした。今まで私の会陰保護で、児頭は何とか乗り切っても肩幅で切ってしまうのは、肩峰幅を最小周囲経にする手技が不十分だったとわかりました。先生は後肩を出すときに、下を向いていた児の頬を上斜めに向く様にまわしてみえ、母子対面に赤ちゃんが滑り出てくるようでした。
就職して10年たち、自分なりに勉強してきましたが、先生の手技をみて、自分の未熟を実感しました。また、今回は、先生の「会陰保護」に対する真摯な思いを聞くこともできました。母体を傷つけることなく分娩することで、楽しい育児のスタートへとつなげていく事が大切であり、女性にとって「会陰」とはを常に考え、技を磨こうとする姿勢が助産師としての使命であると感じました。今、私の勤める病院では、分娩時に産科の当直医に立ち会いをお願いしています。ここ数年、産科医不足から助産師に対する期待も高まってきており、会陰を守ることは医師の業務時間の短縮にもつながり、医師の負担も減らすことが出来るのではないでしょうか、高度な能力を持つ助産師となることで、医師の信頼と理解を得て、現代の産科医療に起きている荒波を乗り切って行けるようになりたいと思いました。
最後に私たちの学習のために、自分の分娩の様子を撮影させてくださった産婦さん達にも深く感謝いたします。助産師の正木先生と産婦さんの信頼関係があるからこそできたDVDだと思います。私もいつかそこまで産婦さんに信頼される助産師になりたいです。現在、育児休暇中でこの研修内容をすぐに活かせないのが歯がゆいのですが、助産師としての使命を忘れることのないようにしたいと思います。           

「会陰保護術」動画による解説を受講して 
                       すこやか助産院  平野陽子

 正木先生の「会陰保護術」を最初に受講したのは十数年前、メディカの講習会でした。それから日本助産師会の長期研修でも正木先生に直接指導を受け、産婦に優しいお産をとおもいながら実施していますが、なかなか旨く行かない時があります。
今回、動画による解説を受けて、改めて、自分の手技との違いを学ぶことができました。肩甲娩出以降、慌てず、でもスムーズにスルッと言う感じに児背から会陰を通過させる方法、しっかり目に焼き付けておきました。
 正木先生がご自身の健康に不安を感じながらも、後輩の育成の為に遠方より駆け付けてくださったこと、本当にありがたく思います。自分に責任を負わないと判断力は養われないと感じ開業して10年目になりますが、もういいかげん自分の手技を確立しないと行けません。自分でやってみて工夫することの大切さを正木先生もおっしゃておられましたが、自己を振り返り、研鑽を続けていきたいと思います。

研修会参加して下さった方々へ

代表理事 山口みちる
このNPO臨床助産の会の活動は、助産師の技を伝える事も活動の一つです。
 受講の技をどの様にお受け止め頂いたか、またどの様な見方をされたかを教えて下さい。
 この間の正木先生の会陰保護技術については、先生の手のどの部分にどの様な力がはいっているのか、いまの自分の会陰保護と何処が違うのか、児頭の下降状況の位置による腹圧の処理の仕方、下降の力の強弱に対する対処方法、
 産婦の安楽度、等々技を自分のものにする為の疑問点は沢山あると思います。
 その様な事柄やご意見を少しでもお寄せ下さい。
開業歴50年弱の私も正木先生の理論にあわせた技の深さに感服し、とても良い勉強になりました。
 NPO臨床助産の会 会員の東京都の犬養祥子さんが、発展途上国のマダカスカル共和国母子保健サービス改善プロジェクトに参加された時の手記を寄稿して下さいましたので皆様にお届け致します。これからもパート2、パート3、と寄稿して下さいますので、お楽しみにして下さい。
 

     
         ハロイン

発展途上国のマダカスカル共和国母子保健サービス改善プロジェクトに参加 東京都 犬養祥子

日本からマダガスカルへ 
〜女性に寄り添うお産を伝える〜
アフリカ大陸の東南に浮かぶ大きな島国、マダガスカル。昨年8月から2ヶ月間、私は国際協力機構(JICA)マダガスカル共和国母子保健サービス改善プロジェクトに参加する機会を得て、日本の無償資金協力により2007年3月に完成したマジュンガ大学病院センター母子保健施設(CME)に派遣されました。CMEは地域のハイリスク妊娠や異常分娩だけを受け入れる病院として機能しており、月平均70〜80件の分娩があり、そのうち約30件が帝王切開となっています。
着任後CMEで私が最初に目にしたのは、助産師が定期的に内診に来るだけで、産婦はベッドで一人陣痛に耐え、付き添う家族も所在なげに座っている姿でした。助産師も陣痛中の産婦に付き添う必要性をまったく認識しておらず、子宮口が全開大したら速やかに児を娩出させなければならないという考えにより、いきませ続けるお産が行われていました。  また、継続的に経過を観察することなく、安易に帝王切開で分娩を終了させる例や不適切な陣痛促進剤の使用も少なくありませんでした。
そのような中で、私の課題は、根拠に基づいた助産ケアと人間的な出産の実施を支援することでした。
そこでプロジェクトの専門家らとともに、陣痛の間欠期の大切さや、不必要な医療介入を避け、産婦に寄り添い産む力を引き出す助産技術を、セミナーやケースカンファレンス、出産立ち会いを通してCMEの助産師に伝えていきました。
当初は「異常分娩を扱うCMEでは人間的な出産などできない」「私たちのやり方を批判している」という声も聞かれました。 また、もう少し頑張れば下から産めると思える産婦が次々と帝王切開されていく状況に手が出せない自分の無力さ、スタッフと分かり合えない悔しさで精神的につらいこともありました。しかし、現場には助産師たちの新しいことを学ぼうとする強い意欲と、どんな厳しい状況でも耐え抜くマダガスカルの産婦たちのたくましさがあふれていました。
私もそれに励まされ、「アザ マネナ(いきまないで)」「ミエナ チャラ(深呼吸して)」「マカイナ チャラ(力を抜いて)」という三つのマダガスカル語を覚えて、スタッフとともにお産に取り組みました。 その中で、長時間の困難なお産も助産師や家族がそばに寄り添い、産婦を励まし、体位を工夫するなど様々な産む努力をして無事出産できると、産婦も満足すると同時に助産師もそのことによって非常にエンパワーメントされていったのです。そして私が帰国する頃には、ケースカンファレンスの中で助産師から「不必要な帝王切開をさけ、自然に産めることを信じて我慢強く待つ」「リスクの有無にかかわらず、全ての女性に人間らしい出産のケアを提供する」という自信に満ちた報告が行われるようになりました。
振り返って感じることは、助産師が産婦と相互的な信頼関係で結ばれ、そばに寄り添い継続的なケアが提供できれば、母親も医療スタッフもともに力づけられ、満足のいく安全な出産につながるということです。日本の助産師は、そのすばらしさをもっともっと国内外に伝えていくことが求められています。私も2008年6月から再びマダガスカルでCMEのスタッフとともに人間的な出産を根付かせる活動に参加する予定です

犬養祥子さんのプロフイール神奈川県在住  助産師  結婚によって小長井祥子さんとなっています。愛知県名古屋市に生まれる平成7年大阪市立大学医学部付属看護専門学校 卒業平成8年京都大学医療技術短期大学部助産学特別専攻 終了平成13年 オーストラリア ウーロンゴン大学 助産学修士課程 終了日本助産師会短期研修生として地域助産院にて実地研修する。大阪や名古屋での病院勤務を経て、(財団法人)東京都助産師会館、八千代助産院に勤務し、平成19年からJICAマダガスカル共和国母子保健サービス改善プロジェクトに短期助産ケア専門家として参加し、派遣活動を行う。現在は、神奈川県で新生児訪問などに従事している。



平成21年度第二回研修会ご案内日時  平成21年11月7日  土曜日場所  大阪府助産師会館講師  竹村 仁 弁護士(竹村法律事務所) 人権問題が世論を巻き起こす今日、助産師が業務中に遭遇した医療事故による医事紛争について、いろいろな症例を具体的にお話頂きますので、是非研修にご参加ください。

ニュース

娘の母乳を飲んだら末期ガンが治った? 英国人男性の事例が話題に。
2009年06月15日22時06分 / 提供ナリナリドットコム
出産から育児を通して母の偉大さを実感する人は多いが、近年は赤ちゃんに対する母体としての機能の面からも、その素晴らしさが知られてきている。例えば、胎児と母親をつなぐへその緒を流れる臍帯血。この中には血液を作る造血幹細胞が多量に含まれており、白血病患者への移植のほか、皮膚や臓器などの組織を作り出す可能性があることが注目されている。そして、臍帯血と同等に注目を浴びているのが母乳だ。

母乳は栄養と免疫力に富む「赤ちゃんにとっての最良の食事」だが、成人に対してもさまざまな効果がある可能性が指摘されている。娘の母乳を飲んだら末期ガンが治ったそうです。


はしか免疫ない乳児4割、10年で4倍 母も持たず
2009年6月4日19時9分
 はしかへの抵抗力のない乳児(6カ月未満)の割合がこの10年で4倍の約4割に増えたことが、国立感染症研究所の調査でわかった。免疫のない母親が増えたためとみられる。はしかによる死亡は0〜1歳児が多いので注意が必要

カンガルーケアで死亡事故多発
生まれたばかりの赤ちゃんを胸に抱き、
お互いのにおいやぬくもりを感じ合うことで親子の絆を深める
「カンガルーケア」。
出産後の最初の親子ケアとして、実施されている医院様も多いのではないでしょうか。
もともとの発祥は1978年、保育器が不足していたことコロンビアでお母さんの体温で赤ちゃんを温めてもらおうという考えから始まり、結果として新生児の死亡率が低下するなどの効果が見られたことから、世界中に広っていったもの。
 このカンガルーケアに関して、専門医らを中心とした医療グループがケアを安全に行うためのガイドラインをまとめたそうです。
 その経緯となったのが、ここ数年カンガルーケアの実施中に赤ちゃんが徐脈や呼吸停止状態になっていることに気付かず、脳の障害など重度の障害を負ってしまうケースが発生したこと。
 適切に行えば、お母さんと赤ちゃんの母子心理発達に非常に効果的であると世界中で報告されているケアであることから、これからも安全対策を万全にしてぜひ実施してほしいとガイドラインが作成されることになったそうです


◆◆◆編集後記◆◆◆
ニュースレター担当の奥田朱美と申します
いつもお世話になっております
原稿を募集しておりますのでよろしくお願いいたします
ご意見はakane8@jyosansi.comまでお願いします
又はFAX0743−65−3813
電話0743−65−3811までお願いします
発行人 臨床助産の会Japanese Clinical Midwifery Association (JCMA)代表理事 山口みちる〒477-0036愛知県東海市横須賀町四の割68番地TEL/.FAX(0562-32-0575) http:// www.jyosansi.com/rinsyou/