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■ 何度も乳腺炎になるオッパイtop pege

 何度も何度も"乳腺炎"に悩まされた人の話です。

 そのお母さんのオッパイは、乳頭の先に白くなった乳管炎が1ヵ所できていて、 見るとそこからも乳汁が出ていました。このような状態は、また乳腺炎になりや すいため、"3時間授乳"を欠かさずする必要があります。4時間とか5時間など、 授乳間隔があいてしまうとすぐに詰まってしまうのです。
 オッパイを触ってみると、その部分は少々堅くなっていました。私は、マッサ ージをしたあと、
・3時間授乳をすること
・和食にすること
・ケーキやチョコレートを控えること
・寝る前の間食は絶対にしないこと
・授乳後は搾乳をして、その後イソジンガーグルで消毒すること
 云々を指導して帰りました。

 しかし、1週間後また乳腺炎になったとのこと。見ると、白くなった ところから乳汁は出ていません。しかし、マッサージをしている最中に"プツッ"と詰ま ったものが出たような感じがして、すぐに治ってしまいました。このお母さん、以前から 私のところに来られていたわけではないので、詳しくは知らないのですが、これで乳腺炎 になること数回だそうです。
 オッパイを見てみると、白くなったところは大きくなってカリフラワーのように盛り上が っているように見えました。お話を聞くと、
「悪い方からずっと飲ませていました」
 とのこと。これは飲ませ方が悪いと思いました。乳腺炎のときは、注意して3時間授乳を 勧めましたが、だからといって同じ方向からだけ飲ませることは、返って乳管炎を助長する のです。私は、左右交互にして3時間授乳をするように指導しました。
 ところが、その4日後に再び乳腺炎になってしまったのです。ご本人は泣い ています。何度も何度も乳腺炎になるので、ついに根負けしてしまった様子 なのです。前回は乳管炎は大きくなっていたから、短期間で繰り返したのでしょう。 その後は調子が良いらしく乳腺炎にはなりませんでした。

 それからちょうど1週間後のことです。同じ方の違う場所にしこりができたとの連絡 がありました。連絡を受けて私が訪問してみると、しこりの部分は赤く腫れて痛々しくなって います。マッサージをしてみたもののしこりを取ることができず、赤ちゃんに直接飲んで もらうことにして、あとはじゃがいもシップ、部分アイスノン、葛根湯を飲んでもらうこと にしました。
 しかし次の朝も取れなかったそうです。ご本人が電話をかけてきて、
「こんなに何度もなるのなら断乳したい」
 と言って、電話口で泣いているのです。
 私は、今何を言っても無駄だと思い、
「断乳するにも今の乳腺炎は直さないとね。後でしこりとして残るわよ。 まずは直してから考えましょう」
 と話しておきました。
 しかし、また電話がかかってきました。お昼ごろ自然に取れたということです。 しこりが取れると一変してニコニコの電話でした。

 ところが困ったことに、また翌々日に乳管炎のある部分が乳腺炎になってしまいました。 またまた本人は泣きながら私に断乳したいと訴える……。私としても、こうも何度も何度 も言われると、励ますことが返って良くないのかも、と思うようになってしまいました。
 ご本人が「抗生物質はどうですか?」と聞くので、抗生物質を飲むと、医師は「母乳を辞めなさい」 と言うわよ、そうなると、吸わさないため乳腺炎はしこりとして残ってしまう。でも自然に吸収される 事もあるが、後々乳腺症などのしこりが残る事があるから……と、そんな事も話しました。葛根湯の作 用も話しました。そして病院に行くのは本人の意思に任せました。

 いろいろ話しを聞いてみると、本人は乳腺炎にならないように一生懸命搾乳をしていたようです。 以前も思ったことですが、これはオッパイのいらい過ぎ(触り過ぎ)ではないかと思い、試しに、 オッパイの時間が来れば飲ませ、それ以外はオッパイを触らないようにと話しました。
 本人は、
「搾乳しないとまた乳腺炎になる……」
 と、とっても不安そうでしたが、
「いらい過ぎ(触り過ぎ)だと思うから辞めなさい」
 と言い、葛根湯の効果などを指導しておきました。
 その乳腺炎は、夕方には吸わせるだけで良くなったそうです。

 その後、これからどうすれば良いかと電話相談を受けました。
 私は、
「葛根湯をもう少し続けましょう」
 と話をして、1週間後に来てもらうことにしたのです。
 1週間後、赤くなっていた乳腺炎の場所には、まだしこりは残っていたものの、 赤みは消え痛みも殆ど消えていました。しかし、しこりは残っているため、じゃ がいもシップをもう1週間続けてもらうことにしたのです。
 よく考えると、赤ちゃんの体重は4ヵ月で8kg。デブのデブ。それまでは一生懸命 にオッパイを吸っていたのですが、ここにきて吸い方が悪くなったということ なので、これが乳腺炎になった大きな原因ではないかと思います。出すぎるオッパイと、 あまり欲しがらない赤ちゃんの、"オッパイの量のアンバランス"が生んだ乳腺炎ではな いかと考え、水分の量、食事を控えてもらうようにしました。また、乳管炎の部分はピ オクタニンを塗ってもらう事にしました。
 乳管炎は安静にする方が良いのではないかと、ずっとこの人を観察していて思いました。 何度も何度も吸わせて搾乳して、そんな事をしているときは乳管炎はカリフラワーのよう に大きくなっていて、あまり飲ませないと小さくなっている。それらを観察していると、 この人は安静にする方が良くなるのではと思ったのです。
 中には母乳の出が悪くなると発症する人もおられますので、乳管炎のトラブルは人に よって違う感があるのですが……。

 その後、そのお母さんはどうなったと思いますか?
 乳腺炎にはならずに、ニコニコ顔で授乳をしていました。私が、乳管炎にな った人の話をすると、
「その人に絶対直るって言ってあげてください」
 と、応援のメッセージをもらってしまって、母乳育児に少しずつ自信がうか がえるようになりました。