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■ アトピー性皮膚炎児と母乳top pege

 この赤ちゃんは、生後1ヵ月ごろから湿疹ができ始め、 だんだん酷くなって黄汁が出ていました。消炎剤の塗り 薬を塗ると良くなります。私は、赤ちゃんが生後1ヵ月を 過ぎたころから毎日訪問して、薬をつけたりしながら様 子をみたり、相談にのっていました。
 病院では「乳児湿疹」と言われていたようです。しかし、 症状はだんだん酷くなるばかり。
 以前は毎日訪問していたのですが、今は母親の希望で、 週に1度のペースで訪問しています。

 最初の様子は、母乳にミルクを少し足すだけで、赤ちゃんの 湿疹が酷くなったり、母親が牛乳を飲んだ後や、卵を食べた後 などに湿疹が酷くなるようでした。
 当時、私は毎日訪問して看ていましたから、たぶん卵と牛乳 が関係しているのでは……と感じていました。ですから、母親 に「卵と牛乳をやめなさい」と指導したのです。
 実際、それでかなり良くなりましたし、母乳だけになっ たのですが、この母親は卵と牛乳をやめることをしないのです。 私が何度言ってもダメ。今は赤ちゃんの皮膚は血がにじみ、黄汁がでて、綺麗とはいえない状態でした。
 皮膚科に行ったときには、
「こんなになるまでほっといて」
 と、医師に叱られたそうです。

 今度は小児科に行き、薬(副腎皮質ホルモン)を処方しても らったそうです。しかし当り前のことですが、それをつけるとあっと いう間に綺麗になります。しかし、つけないとまた出てきます。それは根 本的に治していないからなのです。 いっそのこと母乳をや めて、アレルギー専用のミルクにしたら……、と思ってしまうので すが、母親は母乳で頑張ると言うのです。

 皮膚科の先生は、
「(完治まで)長くかかるかもしれません」
 とか、
「このままでも、春が来ればば治ることもあります」
 などとおっしゃるそうです。そうで無いときもあるのに……。
 私は、母親が食事制限するだけで治るのに、それが何故できな いのかと思いました。どうやら私の言うことを信用できないようです。

――春が来れば治ると思っている母親。
 春が来て治ればいいのですが、こんな母親にはどう 指導すれば良いでしょうか?
 今はただ母親の言うようにさせています。時期が来れば分かるで しょう……。残念ながら私にはそうするしかありません。

 しかし良く考えてみれば、医者という職業は、ものすごいジレンマ の毎日なのではないでしょうか。一生懸命になればなるほど、患者 には言うことに従ってもらいたいものです。そして良くなったと喜 んでもらいたいと思うはずです。
 でも、言うことを聞かない患者ばかりでは、その思いも叶いません。 「薬を飲みなさい」と指導しても勝手に省いたりとか、そんなことを していては、良くなるものも良くなるはずがない。しかし患者は「治し てください」と言う……。こんな毎日では、すごいジレンマで しょうね、と感じます。

 私は助産婦です。医者ではありませんから、アトピーと言いたいけれど、 言えない立場にいます。でも毎日様子を見てると、食事と関係してい ることは分かります。特に卵と牛乳を摂ったあとは酷くなってるいる のです。
 これを皮膚科や小児科の先生にも分かって貰いたいのですが、一回の外来 診察に来られただけで、これを言い当てるのはとても難しいと思 います。
「乳児湿疹」の診断は妥当だと思いますが、アトピー専門の先生な らば分かると思います。ただ、近くにそこまで指導をしてくださる先 生がおられませんから、何だかじれったいのです。
 私がその母親に、
「牛乳と卵をやめなさい」
 と言うと、
「食べるものがなくなります」
 と反論します。何でも食べていい、自然に治る、と思っておられる みたいですね。赤ちゃんの湿疹を見てもあまり苦にならない、のんび りした母親みたいです。私も、母親の言う「自然に治る」ことを祈って、 じっくりと時間を待つことにします。
 こういうとき、お医者さんに言っていただくと効果てき面なんです が……。

 先日、その母親の所へ行って来ました。すると病院から、卵と牛乳 をやめるように言われたそうです。薬も副腎皮質ホルモンを使ってい ましたが、今は、白ワセリンとチンク油(だと思う)を塗っていました。
 赤ちゃんの様子はといえば、まだまだ見られないほど汚い顔ですが、 黄汁は出ていませんでした。皮膚は乾燥しているので、これで徐々 に治るかしら、と思っていますが、今度は何だか喉の調子がおかしい のです。まさか喘息? と心配しています。
 それにしても、やはり医者に言われないとダメなのですね。 その母親も、やっと私の言うことを聞いてくれるようになりました。

 赤ちゃんは生後9ヵ月になり、顔は見違えるほど綺麗になっ ていました。
 先生に卵を与えても良いと言われて、少しづつ試している ようです。幸い湿疹などが出なくて大丈夫のようでしたが、あ まり急がないように指導しました。牛乳はまだ与えていないようでした。

 生後10ヶ月になりました。牛乳を与えると、口の周囲に湿疹 ができるそうですので、まだまだ急がないで母乳を飲ませなさい と指導しました。

 生後11ヵ月。母親は1歳になったら断乳を考えているそうです。牛乳 で湿疹がでなければ良いのですが……。また時期的には秋です。 断乳には季節も関係しますので、1歳をめどに考えて、急に 断乳しないように指導しておきました。
 私の意見としては、1歳半までは母乳で頑張ってみればどうかな と思うのです。男の子ですし、スキンシップを十分に与えると いいと思っています。

 1歳になりました。秋という季節も加わって、また牛乳を直接 (少量)与えたそうですが、その後にかなり酷い湿疹が出てしま ったのです。そこでまた、一からのつもりで牛乳製品・卵製品、 それらに類似するもの全てを与えず、皮膚がきれいになった時点 でまた少量から始めること。今は冬なので、春が来るまでは、 できるだけ牛乳と卵を控えてはどうか……、と指導しました。
 しかし、医者からは「1月になれば与えても良いでしょう」と簡単 に言われたらしいのです。私は、
「ここは用心に越したことはないから」
 と話しておきましたが、どうなることでしょう。

 1歳1ヵ月になりました。牛乳と卵を避けると、湿疹はか なりきれいになったとの話でした。母乳に関しては、
「1歳半まで頑張ってみてね」
 と話しておきましたが、本人はもうやめたいと言います。

 1歳6ヵ月。顔はきれいになっていますが、まだちょっとアトピ ーっぽい感じが残っています。
 医者から、
「一匙(さじ)ずつ、牛乳を飲ませてもよい」
 と言われたようです。私は、そろそろ断乳に入りますから、 牛乳ではなく、アレルギー用のミルクを一匙から与えること、 牛乳で(湿疹が)出ることのないよう慎重にするように、と 話しておきました。
 ミルクが飲めるようになれば、断乳を考えたいと思います。

 その後、結局ミルクは飲みませんでした。牛乳を50ml飲ませて も大丈夫だから、断乳をしたいと母親からの希望があり、断乳し ました。子どもが1歳半のときでした。